研究概要 |
少子高齢社会を迎えた日本において,医療費の増大化を少しでも軽減することが望まれている。このために食品機能を利用した健康維持の試みが重要視されており,本研究はメタボリックシンドローム予防を目指した基礎研究を行う。 本疾病の引き金として肥満が挙げられており,脂肪細胞内での生命現象を詳細に解析する必要がある。脂肪細胞内でどのような機構で脂肪滴形成が促進され,この過程で細胞内に生じる種々の生命現象についての詳細な研究はなされていない。そこで脂肪的形成の分子基盤の解析に焦点を当て,この知見に基づき食品機能を評価する応用研究を発展させていく。 本年度は,インスリンシグナルの下流に位置してそのシグナル伝達を軽減する作用が知られているTRB3タンパク質の脂肪細胞内での機能解析を行った。脂肪細胞分化モデル細胞の3T3-L1を分化させると,TRB3は分化初期に発現低下するものの,その後上昇することが確認され,脂肪細胞分化時に何らかの機能を発揮していることが予想された。そこで3T3-L1細胞にレンチウイルスを用い,TRB3を過剰発現させると分化が抑制され,脂肪滴蓄積の減少が見られた。一方,siRNAを用いてTRB3発現を抑制させると,分化は亢進した。この作用点を明らかにすべく,分化のマスターレギュレーターであるPPARγへのTRB3の作用を解析したところ,阻害活性が見出された。TRB3はPPARγにタンパク質-タンパク質結合をすることを,in vitro, in vivoで確認した。以上の結果より,TRB3はPPARγ活性を負に制御することにより脂肪細胞分化を抑制する作用を持つことが明らかとなった。
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