研究概要 |
本研究は、筋肉の主要タンパク質ミオシンの重鎖サブユニット遺伝子(myosin heavy chain gene,MYH)に着目し、ゲノム中のMYHレパートリーが明らかなトラフグを主対象に、成長過程や異なる筋組織で特異的に発現する種々のMYHを同定するとともに、それらの発現制御機構の解析を進めてきた。 本年度は、胚体遅筋型MYH_<M86-2>につき、レポーターアッセイから同遺伝子の遅筋特異的発現に十分な活性を持つプロモーターを取得し、転写因子結合部位の欠損変異体や、hedgehogシグナル阻害剤を用いた解析から、その遅筋特異的な活性は、hedgehogシグナル下流のSox6による速筋での発現を抑制する経路と、転写因子NFATにより発現を活性化する経路の2つにより制御されることを示した。同様に、遅筋/心筋型MYH_<M5>についても、そのプロモーターの活性には速筋での発現を抑制する領域が重要であること、欠損変異体とモルフォリノオリゴを用いたSox6の機能阻害実験から、その抑制にはMYH_<M86-2>同様Sox6が関わることを示した。また、MYH_<M5>には遺伝子中にmiRNAの一つであるmiR-499がコードされ、そのターゲットがSox6と考えられていることから、ゼブラフィッシュ胚でmiR-499の機能阻害を行ったところ、筋形成過程でSox6の異所的な発現と遅筋線維の部分的な欠損が観察された。一方、メダカでは、同阻害による明確な影響はみられなかった。さらに、前年度に続き、in situ hybridizationでMYH_<M5>とその相同遺伝子、およびmiR-499の発現部位の組織学的解析を行ったところ、トラフグ、ゼブラフィッシュ、メダカ間で、発現パターンに違いがみられ、miR-499の機能阻害の結果と併せ、転写ネットワークと魚種特異的な筋形成との関わりが示唆された。
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