研究概要 |
ミオシンは筋肉の主要タンパク質で、アクチンとの相互作用でATPを分解し収縮運動に必要なエネルギーを得るが、その主たる機能部位は重鎖サブユニット(myosin heavy chain, MYH)に局在する。さらにMYHには一次構造の異なるアイソフオームが複数存在し、それぞれの発現の違いが速筋や遅筋といった異なる性質の筋線維を生み出し、それらの空間的配置が筋肉の性質を規定する。また、発生、成長、運動など様々な生理的要因は、アイソフオームの発現パターンを変え、筋肉を適応的に変化させる。しかしながら、このようなMYHの複雑な発現様式を制御する分子機構の詳細は不明である。他方、魚類では、複数の魚種でゲノムデータベースが利用できること、解剖学的に速筋と遅筋が分離し両者の区別が容易なこと、成体で筋細胞数が増加し温度適応すること、など筋発生、筋分化のモデルとして哺乳類とは異なる多くの魅力を備える。 本研究では脊椎動物のゲノムモデルおよび器官形成モデルとしてそれぞれ研究の基盤整備の進むトラフグおよび小型魚類を主対象に、魚類MYH遺伝子(MYH)の発現変動を調べつつ、トラフグのMYHの転写制御下で蛍光タンパク質を発現するトランスジェニック魚をメダカやゼブラフィッシュで作成し、効率よく遺伝子の転写制御の分子機構を探る。さらに確立したトランスジェニック魚を用いて、その転写機構が、筋肉の発生、分化、成長、運動、傷の修復などにどのようにかかわるかについて検討する
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