(1)近年トランスクリプトーム中には従来考えられていたよりも複雑多様な転写物が存在し、それら転写物が生物学的機能を有している可能性があり、中でも機能調節には蛋白質をコードしないRNA(non-protein-coding RNA ; ncRNA)の関与が最も注目されている。バイオインフォマティクス解析によりncRNAはヒト、マウスで数千から一万以上存在することが示されつつあり、ncRNAは蛋白質をコードするRNA(coding RNA ; cRNA)に対してアンチセンスDNAやsiRNAとして機能し得る構造を持つ場合が多い。ncRNAを含む包括的トランスクリプトーム解析研究は疾病の分子メカニズムや医薬品の作用機構に新たな次元の理解を導くことが予測される。本研究では、バイオインフォマティクスにより生物学的に機能が予測されるncRNA(特にmiRNA)にcRNAを含めた包括的トランスクリプトーム解析用マイクロアレイDNAチップを用い、特にがん関連機能RNA(群)、中でもmiRNAを抽出するとともにその生物学的意義を検証することを目的とする。 (2)国内外で、臨床トランスクリプトーム解析がなされており、一部の疾患では個人化医療の実現に臨床応用されようとしている。しかしながら、すべての研究はcRNAのみを対象とするDNAチップ解析研究であり、生物学的機能がほとんど未知であるncRNA、特にmiRNAをも含めた包括的トランスクリプトーム解析は未だ世界に例を見ない。
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