研究課題
本研究では、これまでに存在した個体レベルでの可視化技術の問題点を解決することで、個体発生における分子シグナルの揺らぎを生体内で可視化し、細胞社会からなる組織・器官形成の新たな構築原理を明らかにすることを目的として実験をおこなった。【ショウジョウバエ外感覚器の発生におけるパターン形成に関わる細胞死】感覚器前駆細胞の誕生を中胸楯板全体のパターン形成の中で捉え、さらに、それぞれのポジションにおける感覚器前駆細胞の発生運命を追跡できるようになった。この観察系は発生のパターン形成、細胞分化、器官形成を単一細胞レベルで追跡できる優れたものである。細胞死シグナルの遺伝学的操作とイメージングを組み合わせた精度の高い研究によって、細胞死シグナルの細胞社会形成における役割を解析した結果、発生過程では分化に失敗した神経前駆体細胞が多数出現し、それらの細胞が選択的にアポトーシスで除かれることで発生のノイズを無くしている仕組みが明らかになってきた。【ほ乳類神経発生における細胞死シグナル】神経発生の様々な局面を抗活性化カスパーゼ3抗体を用いて調べたところ、発生中の嗅覚神経軸索で強いカスパーゼ活性が検出され、この活性は直接的にはアポトーシスを誘導しないユニークなものであることが明らかになった。さらに、この領域で活性化されるカスパーゼ9のユニークな基質としてSemaphorin 7Aを見いだした。カスパーゼ活性化がおきない変異体では嗅覚神経軸索走行に異常が観察され、その際に嗅覚神経細胞数に異常は無かったため、カスパーゼ活性が非細胞死機能として軸索走行制御に関わることが判ってきた。
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http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~genetics/index.html