研究概要 |
本研究では、TCRミクロクラスター(MC)が、T細胞の抗原認識、初期活性化、活性化維持に重要な構造であるという発見に基づき、従来のT細胞の抗原認識様式と活性化制御の機構を見直すことを目指している。1、生理的条件下でのMCによる抗原認識機構を解明するために、CD3ζ鎖-GFPのknock-inマウスを作製した。このマウスのT細胞は全てGFP+で、抗原活性化に伴ってTCR-MCとcSMACが形成されることから、MC形成機構の詳細な解析が可能となった。また、自己抗原の認識がMC形成とT細胞活性化に及ぼす効果を解析するために、外来抗原(チトクロムc)および自己抗原(HSP,β2M,など数種)ペプチドをリンカーでGPI型MHC分子に直接会合する「単一ペプチド・MHC-GPI」を作製した。これを発現させたCHO細胞を作製し、精製することによって、これらを含むplanar bilayerを作製することに成功した。これを用いて、自己ペプチドによる抗原認識・MC形成・T細胞活性化への影響を解析することが可能になった。2、ミクロクラスターによるT細胞活性化制御の解析として、CD28を介する副刺激シグナルの時空間制御の解析をした。CD80-GPIを発現させたplanar bilayerを用いてCD28の動態を解析した結果、抗原による初期活性化においてはCD28はTCR-MCと共局在し、MCでの活性化シグナルに貢献することが判明した。更にcSMACが形成された後には、cSMACの外側領域に集合することから、活性化維持における副刺激は、これまで知られない特別のcSMACのサブ領域によって制御されていることが示唆された。これまでcSMACでは活性化シグナルは伝達されないと考えてきたが、副刺激を制御していることが示唆され、cSMACの新しい機能に繋がると思われる。
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