研究概要 |
T細胞の抗原認識と活性化におけるTCRミクロクラスター(MC)形成とそれによるシグナル伝達系の一分子レベルでの解析を目指している。昨年度までに、TCR活性化シグナルにおける、TCRミクロクラスターが活性化ユニットとなっていることと共に、CD28を介する正のcostimulationシグナルも、MCを介してPKCqを誘導して制御されることを明らかにした。今回は負のcostimulation受容体CTLA-4を介しての制御のダイナミックスを明らかにすることができた。CD28副刺激に伴って、TCR-MCに最初にCD28が集積した後に、cSMACの亜領域に集結することが判明した。PKCqもこの亜領域に集結し、CD28-PKCqの会合が起こり、持続的副刺激が誘導される。これまで免疫シナプスの中心であるcSMACは、シグナル伝達への関与はないと思われていたが、副刺激シグナルの解析からシグナル伝達にも関与していることがわかり、更にcsMAcにも2つの領域cD3(hi,lo)が存在し、特にCD3(lo)領域がシグナル伝達を担うcSMAcであり、CD3(hi)領域はTCR取り込み・分解を行う領域であることが判明した。CTLA-4は、T細胞活性化に伴って発現し、このCD3(lo)シグナル伝達cSMACに集積する。CTLA-4はCD28とリガンドCD80/CD86との結合を競合し、結果としてPKCqのリクルートを阻害することがイメージング解析から明らかになった。同時に機能解析からは、CD28-PKCqとの競合阻害が、活性化の阻害を誘導している。生理的な条件下で、このダイナミックなCD28-CTLA-4の競合制御がなりたっているのかを、恒常的にCTLA-4を発現している唯一の細胞集団としての制御性T細胞(Treg)を調べた。その結果、抗原刺激したTregのCD3(lo)シグナル伝達cSMACには、CTLA-4のみが集積して、CD28-PKCqを排除していることがわかり、恒常的に発現するCTLA-4によるTregの不応答性の分子機構となっていることが示唆された。
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