研究概要 |
1)軟骨変性制御分子のクローニングと分子ネットワークの解明 軟骨肥大化分子の網羅的スクリーニングによって、HIF2Aが強力に軟骨細胞の肥大分化を促進することを見出した。HIF2Aは複数の分子を転写誘導することによって肥大分化以降の軟骨内骨化過程を広く制御し、NF-κBの下流シグナルとしてOAの発症・進行に関与する主要分子であることをマウスのみならずヒトにおいても解明した(Nat Med, in press)。HIF2A/NF-κBシグナルに代表される軟骨内骨化関連分子がOAの治療標的となることが解明された。 2)重症度評価システムの開発 KOACADの臨床利用を目的に、国内外の大規模観察研究であるROADと米国NIH主導の大規模OA疫学プロジェクトOAIデータベースにおいて撮影した膝X線画像のOA重症度指標の定量値を解析したところ、膝関節痛の有病と最も強い相関を示したのは関節裂隙最小距離の減少であり、1mm減少することにより男女ともに約25-40%膝関節痛のリスクが高まることが明らかになった。 3)遺伝・環境因子の網羅的・系統的探索 日本の4地域のコホート参加者3,500名から得た末梢血よりDNAを抽出し、KOACADによる各種計測値を含む臨床情報をデータベース登録した。ゲノムワイド関連解析(GWAS)による関連解析でP-value<0.01であった3,328 SNPを同定した。また、OAゲノム研究の国際コンソーシアムであるTREAT-OAで見つかった20個の膝OA感受性候補SNPについてreplication studyを行い、第7染色体上の7q22の領域に存在するrs4730250が膝OA感受性SNPであることが同定された。
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