研究概要 |
全ての情報処理の基礎であるアルゴリズムは,多種多様な情報が溢れている現代IT社会において特にその重要性を増している.情報過多の時代と言われているが,実は入力情報の不完全性をいかに扱うかが現代アルゴリズムの大きな課題となっている.例えば,商品相場のような時々刻々と変動する系に対するアルゴリズム設計等においては,最適計算に必要な入力データそのものが不十分な形でしか得られない.将来の入力の変動が予測できない条件のもとで,正確さや決定性の犠牲を抑えながら高速に近似最適解を得る,スケーラビリティを重視した情報処理技術が重要になっている.しかし,単純な発見的手法等に頼ったアルゴリズムでは,計算量のメリットと犠牲のトレードオフが分からない場合が多い.本研究では,このような入力情報の不完全性を扱うアルゴリズム設計において,品質保証をいかに厳密に行うかを明らかにする. 以下,代表的な結果である最大マッチング問題に対する定数時間近似アルゴリズムを例に成果を述べる.グラフのマッチングとはグラフ中の枝集合で、互いに端点を共有しないもののことを言う.本研究では,次数に上限のあるグラフの最大マッチングのサイズを高い精度で近似するグラフの頂点と枝の数によらない定数時間で動作する乱択アルゴリズムを示した.これはWebグラフのような巨大なデータが与えられたとき,データ全体を調べずに定数個の頂点を調べることでマッチングのサイズが高い確率で求められることを意味している.
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