研究概要 |
初年度に検討した大規模変数次元データからの部分因果ネットワーク推定手法を拡張し,最も可能性の高い遺伝子発現因果関係全体を表す因果ネットワークを推定導出する手法を開発した.これまでの2年間の各研究の結果,大規模変数次元データ上で因果ネットワーク候補を多数導出して,その上でグラフマイニングを適用して部分因果ネットワークを推定導出するよりも,独立成分分析(ICA)を用いて多変数間の因果関係全体を推定する方が,結果の精度と安定性において優れることが分かってきた.本年度は,この知見を生かした手法開発を行った.これによって, 部分的な遺伝子発現メカニズムの解明のみならず,多数の遺伝子が相互に影響し合って発現する全体のメカニズムを解明する手段を提供できるようになった.更に2年度目に取り組んだ類似した遺伝子発現部分因果ネットワークに含まれる未知機能遺伝子の機能を類推する技術と,上記,遺伝子発現の全体因果ネットワーク推定導出種手法を組み合わせ,各種機能を有する遺伝子が全体としてどのように相互に影響し合って発現動作するかを解明する方法論を確立を目指した.上記独立成分分析(ICA)を用いて多変数間の因果関係を逐次導出する手法に,専門家の知見を含めた機能推定手法を組み合わせることにより,各遺伝子の機能を解明できることを明らかにした. そして,以上の手法及び方法論を種々の遺伝子発現データに適用し,各々のデータについての遺伝子発現因果ネットワーク全体の推定,それらネットワーク上での各種遺伝子機能とそれらの発現関係の推定を実施した.遺伝子発現の因果ネットワークを知る意義の高いデータや因果ネットワークの導出のために整備された条件を有する公開データが限られるため,対象データの厳選と共に,更に適用可能なデータの洗い出しを進めながら解析を実施した.この上で,これら実施した推定結果を知識ベースとしてまとめた.
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