安定的培養条件の確立と電気活動経時変化のキャラクタライズを行った。培養条件を7mm径のリング中に30万細胞を培養する密度で固定し、100目以上の長期間培養細胞を維持した。この培養条件下で、ラット海馬分散培養系に於いて神経細胞間の機能的な結合の分布は一様ではなく、多数の入力を受けるハブ的な神経細胞が存在し、これらは神経回路網に於ける自発的な電気活動により自律的に構成されることが示唆された。これは、神経回路網を部位を切り替えながら電流刺激することで誘導活動電位の空間分布を解析することでも確かめられた。また、自発的活動電位の高頻度バースト活動後に、活動頻度の空間分布が不均一化すると言う興味深い知見を見いだした。 培養細胞の密度に依存した機能的結合状態の経時変化の様態を免疫組織化学的手法で解析し、グリア細胞が増殖するが、培養後数十日で安定してくること、神経細胞の脱落は培養開始の早い時期に起こり、その後は比較的安定して維持されることを確認した。 機能的結合の空間パターンの識別するためのアルゴリズムを開発した。学習型T-ノルム演算子、T-コノルム演算子を用いて神経細胞間の結合構造を表現し、空間パターンの特徴量データから、ノルムの結合パラメータを勾配法などの非線形探索手法で学習、同定する手法である。これを培養神経回路網の電気生理学的データから計算するソフトウェアを開発した。現在、ソフトウェアの動作を検証している段階である。
|