テキストデータの作成に関しては、『古事類苑』地部(1)※の全文データを公開し、懸案だった地部(2)※(3)※についても校了となり、公開まであとは外字のユニコード変換テーブルの作成と変換を残すのみとなった。地理データの作成に関しては、20万分の1帝国図ベースマップにした海岸線データと旧国郡境界データを作成し、『古事類苑』が編纂された明治末〜大正期の国土のシェープファイルを整備した。また、『古事類苑』地部に記された人工物・自然地名の位置比定と経緯度情報の作成作業、シェープファイル化作業をあらかた終えた。また、京都地域の近代化と都市化の考察のための基礎資料とするべく、京都地域の2万分の1迅速図と正式図の高精度接合作業を行なった。データ分析にかんしては、京都盆地北部に現存する164の日本庭園のリストを作成し、GISを用いて地図化した。庭園築造数を歴史的にみると、江戸時代と大正時代にそのピークが認められた。土木技術が発達した江戸時代には大規模な庭園が数多く築造されたが、池などの地表水を欠く庭園の多くが扇状地扇央に分布しているのに対し、地表水のある庭園は湧水のみられる東山丘陵の山麓に集中していることが確認できた。明治〜大正時代に建設された庭園のほとんどは1890年に完成した琵琶湖疏水沿いに位置しており、池・流れ・滝などの水景が重視されている。これらのデータは、京都盆地に分布する庭園が自然的にも人為的にも水文条件の影響を強く受けていることを示していることがわかった。(※(1)(2)(3)については、交付申請書研究実施計画、参照))
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