テキストデータ作成については、『古事類苑』地部(2)(3)約2800ページの全文情報を「古事類苑全文データベース」の一部として計画通り公開した。同データベースには1日平均100件のユニークアクセスがあり、これにより日本の歴史的地理にかんする内外の研究者に大きく貢献している。また、同書の伊勢國の記述を対象に、そこから手作業で抽出した地名と『大日本地名辞書』の地名を文字列マッチングで比較対照することにより、『古事類苑』の本文から地名を自動抽出する可能性について検討を行った。その結果、異体字を集約するプロセスを経れば、地名自動抽出に有効なツールを作ることができる可能性が示された。地図データ整備の面では、明治後半に作られた20万分の1帝国図から作成した旧国郡境界、自然地名、人工物地名シェープファイルの検証を行い、明治元年の国郡境界を復元する必要性を認識し、そのための基礎情報の収集を行った。また、京都地域の2万分の1正式図(10葉)にある、道路、鉄道、駅、行政界、水〓線、土地利用、地名のすべての情報をシェープファイル化した。これにより、GIS分析に供することが出来る、明治なかば頃の京都のデジタル地図がほぼ完成した。データ分析の面では、京都盆地内の庭園の立地とその水文条件について分析を行い、池泉式庭園の立地に特有な条件をあきらかにできた。また、『古事類苑』の編纂事歴を精査し、「地部」に採録された事項の情報量に地域的な偏りがあることをあきらかにした。その理由としては、国ごとの編集担当者の特質に関係があることが示唆されているが、それについては今後さらなる検証が必要である。
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