1.医薬分子化学構造の吟味とデータベースの再構築 申請者がこれまで独自に構築してきた既存医薬分子のデータベース内の化学構造情報を精査し、誤りのあった構造を修正した。解離状態および互変異性についても検討し、最も妥当な化合構造を採用した。プロドラッグについては、活性型の化合物にしたものを新たに登録した。さらに今年度に使用が許可された新薬の化学構造も登録した。これらの作業により、本研究の中核をなす、国内で現在使用されている医薬分子の構造データベースが再構築できた。 2.タンパク質構造の選定と修正 本年度は、炭水化物の代謝に関係するタンパク質に焦点を当て、X線解析がされている独立タンパク質を約50種類選択し、それらに関する座標データ等の情報をProtein Data Bankから取得した。これらの情報はデータベース化し、その中から分解能やR因子が低く解析精度の高いタンパク質を抽出した。 3.医薬分子結合部位の予測 タンパク質上には複数の窪みが存在する。どの窪みが結合部位として適するかを判断するアルゴリズム(PLB法)の開発を行った。この方法で用いるPLB指数が第2位までの窪みを選択すると、X線解析が行われているタンパク質-低分子複合体構造中のリガンド結合部位を90%近く予測できることが明らかになった。 4.ドッキング・アルゴリズムの改良 タンパク質-医薬分子様低分子複合体の高質X線結晶構造を充分正確にシミュレーションできるように、申請者らがこれまで開発してきたドッキング・アルゴリズムを改良すると共に、適切な計算プロトコルを作るための検討を行った。その結果、高質X線結晶構造を用いる場合、十分な精度でリドッキングできるプロトコルを見出すことに成功した。
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