1)プレ・ドッキング法の開発の続行 PLB法により特定されたconcavityに対してどのような種類の分子が結合するかを予めスクリーニングする方法は、ドッキング・シミュレーションの負荷を軽減し、その正確さを向上させることが可能である。この目的で昨年度に開発したAlpha Site Filter法をさらに改良して、有効なプレ・ドッキング法として整備した。しかし、残念ながら本研究課題で行って来たドッキング・シミュレーションに実際に適用することは時間的に難しかった。 (2)生体分子の代謝に関わるタンパク質と医薬分子のドッキング計算 今年度は(1)、(3)および(4)を実施するために、新しい種類のタンパク質に対するドッキング計算を行うことはできなかった。 (3)ドッキング・シミュレーションを用いた医薬分子の毒性予測への展開 血漿アルブミン(HSA)は医薬分子と結合して医薬分子の体内動態に大きな影響を与える。HSAには複数の医薬分子結合部位があるが、今年度はNSAID類が高い親和性を持つsite IIに既存医薬分子がどのように結合するかをドッキング・シミュレーションした。さらに、X線解析、NMRそして結合実験によりsite IIへの結合性が確認されている分子がドッキング・シミュレーションでどのようにスクリーニングされるかを解析した。その結果、ligand efficiencyで評価すると、site IIへの結合が知られている分子を識別することが可能であることが明らかになった。本結果は、ドッキング・シミュレーションが副作用と密接に関係する薬物動態の一部を予測する上で有効であることを示した。 (4)既存医薬分子と炭水化物代謝タンパク質との相互作用解析 (3)の研究成果を受け、ligand efficiencyを用い、ドッキング・シミュレーションで得た炭水化物代謝酵素と既存医薬分子の結合性を詳細に解析した。
|