研究課題
ウィスコンシンカード分類課題をサルに訓練し、脳の部分破壊の影響観察と神経細胞活動記録を用いて、前頭前野の各部位の働きを調べている。今期は、脳の部分破壊の影響観察実験を前帯状溝領域に拡大した。課題では、まずサンプル刺激が表れ、次にテスト刺激が3個表れる。サルは、サンプル刺激とあるブロックでは同じ色、別のブロックでは同じ形のテスト刺激を選択し触れなければならない。正答にはビスケットの粒を与えた。マッチングのルールはブロックの中では一定であるが、正答率が85%(20試行中)に到達すると変更した。現在有効なルール、およびその変化を示す手掛りは一切与えず、サルは自分の選択反応に対する報酬の有無だけを手掛りに現在有効なルールを探さなければならなかった。前頭前野背外側部の主溝領域、前頭眼窩野、前帯状溝領域のそれぞれ両側破壊で、ルール変更後に正答率が回復する過程が遅くなった。サルの反応をさらに詳細に解析し、また別のプローブ課題での成績を検討すると、3群に違いが見出された。主溝領域破壊サル群では現在有効なマッチングルールを作業記憶に保持することに問題のあり、前頭眼窩野破壊サル群では成功試行の経験をルール選択につなげる過程に問題があったのに対し、前帯状溝領域破壊サル群では、誤答での反応時間が短縮した。誤答での反応時間の短縮は、マッチングルールの作業記憶を参照することなしに衝動的に反応する試行が増えたことを示唆する。これらの結果は、3領野は異なった要素的機能を果たすことでウィスコンシンカード分類課題などのルール依存行動に寄与することを示唆する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
The European Journal of Neuroscience 31巻
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Journal of Neuroscience (In press)
http://www.brain.riken.go.jp/labs/cbms/tanaka.html