研究課題
CD38ノックアウトマウスが示す自閉的反社会性行動と血中および脳内オキシトシンレベルに相関が認められた事を出発点に、自閉症とオキシトシン分泌との直接的因果関係を証明する動物実験を行った。虐待、ニートといった個人の行動異常や、いじめ、学級崩壊といった集団の行動異常は現在社会の一大関心事である。これらの行動異常の背景には少なからず発達障害が存在している事が分かっている。ここに自閉症を含む発達障害の生物学的基盤を究明することの重要性がある。解決に迫れるテーマの一つとして、オキシトシンとその周辺分子に焦点を絞り研究した。オキシトシンは視床下部細胞や脳下垂体後葉から分泌される主に女性の生殖・繁殖活動に関わるホルモンと考えられてきた。しかし、オキシトシンは男性の脳にも多く存在しており、人間の脳内で情動行動・精神活動に関わる重要な働きがあると推測されるようになった。オキシトシンの脳遊離をCD38分子が制御して他の個体に対する認識や愛着親和的態度などに関わっており哺乳類の社会行動を左右する重要な役目を持つことを示した(Nature,2007)。そこで、今年度は、CD38遺伝子の一塩基多型(SNP)を15ヶ所で、自閉症群330人健常群732人で調べた。SNP6(rs3796863)がアメリカ人の高機能性自閉症者と強い相関があり、またSNP13(rs1800561)が日本人の自閉症者と弱い相関がある事を見い出した。さらに、SNP13を持ち、血中オキシトシン濃度が低い事を確認した23歳男子の自閉症者にオキシトシンを投与し、自閉症症状の改善される事を観察した。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (1件)
Neurosci.Res. (in press)
Heart Rhythm (in press)
J Neuroendocrinol (in press)
J Neuroendocrinol. (in press)
Neuropharmacology 58
ページ: 50-55
Clin Sci (Lond) 117
ページ: 415-424