研究概要 |
マウス発生期大脳皮質の神経細胞の誕生及びその後の動態を可視化して観察することにより、脳室帯で誕生した細胞と脳室下帯/中間帯で誕生した細胞とでは移動プロファイルが全く異なることを見いだした。すなわち、前者は脳室帯で最終分裂を終えて神経細胞として誕生した後、脳室帯内で10時間以上にわたって留まり、その後に脳室帯直上(多極性細胞蓄積帯multipolar cell accumulation zone, MAZ)に移動して、「多極性移動」と命名した特徴的な運動をしながら約1日停滞した(slowly exiting population, SEPと命名)。一方後者は、脳室帯から細胞体トランスロケーションと呼ばれる様式で素早く脳室下帯または中間帯深部に移動し、その後にさらに分裂を行った(rapidly exiting population, REPと命名)。すなわち、REPはbasalprogenitorsと呼ばれる神経前駆細胞を含み神経細胞を産生するが、一部にグリア前駆細胞も含むと考えられた。GFP発現ベクター等の脳室面への遺伝子導入によって脳室面の細胞をラベルしたところ、同時にラベルされたREPはSEPよりも早く脳室下帯/中間帯に移動したが、それらはその後その部位に留まった。一方SEPは、MAZを脱出後、脳室下帯/中間帯に停留中のREPを追い越して先に皮質板に進入し、辺縁帯直下に到達した。それにより、神経細胞としての誕生時期に依存した“インサイド-アウト”様式の各皮質層への細胞配置が保証されることがわかった。さらに、皮質第IV層の神経細胞に注目し、脳室下帯/MAZに停留中及び移動終了後に強く発現する分子の皮質発生・発達期における機能を明らかにした。
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