研究課題
基盤研究(A)
大脳皮質の神経細胞は、多くが脳室面近くで誕生し、辺縁帯直下へと移動した後、誕生時期をほぼ共通にする細胞同士が集合して、脳表面に平行な6層からなる多層構造(皮質板)を形成する。我々は、独自開発した移動神経細胞の可視化法によって、脳室面近くで誕生した神経細胞がその後どのような挙動をとるかを観察した。その結果、多極性移動と命名した新たな細胞移動様式を見いだした。すなわち、脳室面で誕生した神経細胞の多くが、実は移動開始後に多極性に形態変化し、「脳室下帯」と呼ばれる脳室帯直上の部位で多くの細い突起をさかんに出し入れする特徴的な運動をすることがわかった。それらはその後、中間帯で再度双極性に形態変化し、放射状線維に沿って脳表面近くの辺縁帯直下へと向かう(ロコモーション)。辺縁帯直下で移動を終えつつある細胞は、核形態がヘテロクロマチン様からユークロマチン様に変化するとともに、同じ時期に誕生し個別に移動してきた細胞同士が再び凝集して新たな細胞間の関係を構築していくこと、それまで移動に使っていた先導突起を変化させて著明な樹状突起を分化成熟させること等様々な現象を一斉に示すことを見いだした。これらの事実は、辺縁帯直下で何らかのシグナルにより活発な転写が開始され、皮質形成において重要な一連の現象が開始される可能性を強く示唆する。しかしながら、その実態・機構は全く不明である。そこで本研究では、大脳皮質神経細胞の移動過程のうち「脳室下帯」と辺縁帯直下の二カ所に特に注目し、移動神経細胞に対していかなる制御が行われるのかを明らかにすることを目指す。
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