脱ユビキチン化酵素UCH-L1は脳神経系では神経細胞特異的発現を示し、パーキンソン病、アルツハイマー病など神経変性疾患との関わりが深い。また、酵素としての役割に加え、ユビキチン結合蛋白質としてユビキチンの安定化に関わるなどその多機能性と生命現象との関連性が注目を浴びている。昨年度までに神経変性疾患の危険因子の一つと考えられている酸化ストレスがUCH-L1自身を酸化修飾し、さらに酸化型UCH-L1はその凝集性が亢進し、他蛋白質の結合性が高まっていることが見出した。今年度は、酸化型UCH-L1はchaperon mediatedオートファジー(CMA)の構成成分であるLAMP2等と結合しCMAを阻害する結果、本来CMAで分解されるべきアルファシヌクレインの蓄積を引き起こす可能性を発見した。これらの変化は家族性パーキンソン病PARK5の原因遺伝子と考えられるI93M UCH-L1でも見出されていることから、孤発性、家族性パーキンソン病の共通機序としてUCH-L1の凝集性亢進、蛋白質相互作用の変動が存在する可能性が考えられた。また、UCH-L3についてジユビキチンが内在性のUCH-L3酵素活性インヒビターである可能性を報告した。以上の成果はUCH-L1およびUCH-L3が生命機能発現や病態の形成に深く関わっていることを示唆する。
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