研究概要 |
今年度は,開発した脳低温自動管理システムの臨床応用研究を進めた。具体的には,本学医学部付属病院集中治療部にて行った3例の脳低温療法症例において,開発したシステムによる脳温自動制御臨床応用試験を本学脳神経外科の共同で行った。この結果,制御誤差±0.3℃を達成する一方,特に副作用は生じず,現場スタッフの負担を大いに軽減することができた。特に,患者特性の個人差,経時変化,非線形性に対して,採用した適応制御やファジィ制御が柔軟に対応し,臨床的ニーズを十分に満たしたことが確認できた。したがって,これにより表面冷却による脳温管理が簡便化でき,スタッフの労力を大いに軽減できることが確認できた。また,スタッフの労力の軽減による医療コストの抑制も計算できるので,本研究の成果による基本的な脳低温療法の普及促進効果も間接的に確認できた。この成果を踏まえて,次のステップとして計画している本学外の医療機関における臨床応用試験のためのシステム開発にも取り組んだ。これは,本学内の脳低温療法症例が少なく,さらなる試験が必要であることと,システムに対する客観的な評価のためには多種の医療機関での試験が欠かせないと判断したからである。そのため,これまで3つに分割されていた装置の小型一体化,電気的・生物学的安全性の向上,水漏れ対策などを行った。特に昨年度と異なるのは,全消費電力を抑制しながら冷却及び加熱効率を最大に保つ技術を考案・導入したことである。その結果,本研究者らが実際に現場で操作しなくても臨床応用試験が可能な環境が整ったので,現在は装置の動作確認基礎試験を準備しているところである。 また,脳圧や脳血流の制御システムの基礎開発のために準備している動物実験システムの組み上げも進め,現在は対象動物の妥当性と疾患モデルの作成方法の検討を行っている。
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