研究課題
有機金属気相成長法によりSi基板上に直接成長したCdTe層を用いた、p-CdTe厚膜層/n-CdTeバッファ層/n^+-Si構造のヘテロ接合型ダイオードX線検出器について、検出感度およびエネルギー分解能の向上を目的として検討を行った。検出感度向上にはp-CdTe層の厚膜化(100μm以上)と共に、p-CdTe層の高抵抗化が必要である。p型層高抵抗化は成長温度510℃以上でTe過剰の成長条件(VI/II比3.0)で、エチルヨウ素添加量を10^<-6>mol/min以上とすることにより自己補償を活用して達成できることを見いだした。また、CdTe層電気特性のヨウ素添加量依存性からCdTeにおける自己補償機構について検証を行った。一方、エネルギー分解能の向上には、動作時の暗電流の低減が必要である。暗電流の低減には格子不整合による高密度の転位が存在する、n-CdTe層中への空乏層の広がり防止が必要である。ここではn-CdTe層の高電子密度化による空乏層の広がりの低減を検討した。その結果n-CdTeは成長温度325℃、VI/II比を0.15以下に低減することにより、Si基板上でも電子密度10^<17>cm^<-3>以上の高電子密度のn-CdTe層が成長できることを確認できた。この結果をふまえ今後n-CdTe層厚さ等の最適化を実施しさらに暗電流の低減を図る。またこれまで、成長面内における成長層結晶性や電気特性の不均一が、検出器の特性や再現性変動を引き起こし、目的とする検出器アレイ実現の障害となっていた。この最大の原因は成長前処理として実施する、GaAs処理時における基板温度変動やその分布の不均一と考えられる。これらの問題の解決を目的として前処理装置の根本的な改良を実施した。今後はその装置を用いて、検出器特性の向上と共に、目的素子の実現を図る。
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