研究課題
有機金属気相成長法によりSi基板上に成長したCd(Zn)Te単結晶厚膜を用いて、画素ごとに入射X線フォトンエネルギーを識別できる能力をもつ、高性能大面積の2次元アレイ型X線画像検出器を開発することを目的として研究を行った。本年度は1.検出器暗電流のさらなる低減による検出特性向上と、2.大面積アレイ実現を目指した、成長層の高品質化と大面積化について検討を実施した。1暗電流低減にはヘテロ接合界面の格子不整合に起因する転位による影響の低減が必要である。このためn-CdTeバッファ層中の転位密度の低減を目的として検討を行った。バッファ層成長時に成長を中断し、この間に成長温度から常温まで数回昇降温を繰り返し実施した場合、暗電流が低減できることが確認できた。これは上紀の処理により転位の発生とアニールによる消滅が生じるためと考えている。今後アニール温度の最適化によってさらに低暗電流化が見込める。2成長層高品質化と大面積化については以下の検討を実施した。これまでSi基板上の成長層では基板からの成長層の部分的剥離や、成長面内での結晶性の不均一の発生防止が課題であった。これは主としてCdTe成長に先だって実施するSi基板の成長前処理における、基板面内での処理条件の変動や不均一が発生によって生じる。本年度はこの問題の改善を目的として新規の前処理装置を開発し、成長前処理の精密制御化を実現すると共に、基板面内における前処理の均一性と再現性の向上を図った。その結果、基板と成長層の部分的な剥離を防止すると共に、良好かつ均一な結晶性をもつCdTe層を実現した。さらにこの成長層によって検出器アレイを製作し、その特性の評価からも、均一かつ良好な特性が得られていることを確認した。以上の結果は本研究で提案した方法により、最終目的とする高性能大面積X線画像検出器が実現できることを強く示唆している。
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IEEE Trans.Nuclear Science 56(3)
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http://www-yasuda.elcom.nitech.ac.jp/