研究課題
多糖類の低分子化により口腔内ずり速度10~50s^<-1>程度において同じ粘度を示すが流動特性の異なる嚥下造影用試料を大量に調製する方法を確立した。30名の患者に対して嚥下造影検査を行った。検査食のX線ビデオの画像から食塊の3次元的輪郭を時系列的に取りだし、食塊内部の流動を解析した。その結果、ずり速度によって咽頭部の残留量や誤嚥量は異なっており、本検査食によって食品による嚥下困難度判定の可能性が示された。患者のX線ビデオからは、健常者と異なり一度の嚥下動作で検査食が嚥下されず、喉頭蓋近傍の管腔部に一部食塊が残留する様子が観察された。検査食の残留食塊はとろみがあるため喉頭蓋近傍で留まり、次の嚥下動作で喉頭蓋の周りに沿って正常に流れた。しかし、食塊量が多い、あるいは粘度が低い場合には、次の嚥下動作が始まる前に食塊が静止状態を保つことができず、喉頭蓋の内に沿って流れてしまい、喉頭に入り込む誤嚥の危険を予測できた。数値シミュレーション解析からは食塊量が増えると誤嚥の危険が高くなること、食塊粘度が低いと食塊がより広い範囲に広がり誤嚥の危険性が高くなることなど、X線ビデオの結果を裏付ける結果が得られた。更に多様な嚥下障害の症状の診断に対応できる検査食の開発、また、検査食と実際の食品との関連付け、体系的診断システムの確立の基礎を築くことができた。また、嚥下補助食品の飲み込みやすさの評価をするにあたり、市販食品に提示されているとろみ表現に適した一般食品の検討を行った。一般食品(液状)のテクスチャー特性、定常ずり粘度測定、動的粘弾性の測定を行った。市販されている代表的な嚥下補助食品を2%および3%添加した試料について、とろみ表現に多く用いられている「はちみつ」および「ヨーグルト」との比較を行い、その適格性について評価を行い、両者ともかなりあいまいなまま使われていることが分かり、製造者、病院・施設での使用者、患者の間でのテクスチャー用語の合意形成が必要であることが確認された。
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