研究課題/領域番号 |
19200057
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研究機関 | 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所 |
研究代表者 |
佐野 千絵 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター・保存科学研究室, 室長 (40215885)
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研究分担者 |
木川 りか 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター・生物科学研究室, 室長 (40261119)
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キーワード | 微生物 / バイオリソース / 遺伝子 / 環境材料 / 文化財科学 / 古墳壁画 / 漆喰 / 劣化 |
研究概要 |
高松塚古墳は著しい微生物劣化から2007年に解体修理となった。微生物の侵入経路や劣化機構解明には、壁面で繁殖している微生物だけではなく古墳内の微生物環境全体を把握することが重要である。本研究では、高松塚古墳壁画等汚染微生物群を総合し、遺伝形質データ(特に遺伝子塩基配列)解析による種レベルの同定を行い系統分類学的位置を明らかにし、微生物劣化対策立案の基礎資料を総合的に構築することを目的とする。 高松塚古墳壁画の劣化にかかわるサンプルの提供を文化庁より受けて、以下の調査研究を進めた。 1.分離株公開化のための調査研究 これまでに詳細同定を終えている保存菌株について分析を進め、高松塚古墳およびキトラ古墳から新種の酵母が得られ、原著論文として投稿し、バイオリソースとして利用できる環境を整えつつある。また、劣化に係わった主要な微生物株(カビ61株、酵母19株)についてそれらの多様性についての原著論文を投稿し、広く学術研究に供することができるよう寄託準備をおこなった。 2.劣化要因微生物の遺伝子配列解析による種レベルでの同定 これまで未同定であったPenicillium sp.1について詳細同定を進め、培養的・形態学的形質の観察結果および分子系統学的データの統合的解析からPenicillium sp.1はP.paneum Frisvadと同定し、文化財の生物劣化に係わるはじめての分離報告例を示した。 3.劣化要因微生物の特性調査 劣化要因微生物株の代謝物について、定性分析をおこなった。劣化に関連した微生物株はその種類によって、代謝物の生産量にある一定の差が生じることが明らかになり、酸生成速度等の定量分析のための準備が整った。 4.研究成果のすみやかな公開 研究成果は日本農芸化学会にすみやかに報告し、また原著論文2報をまとめ投稿した。また調査記録の一部は、紀要、シンポジウム等で一般普及を図った。
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