高松塚古墳は著しい微生物劣化から2007年に解体修理となった。微生物の侵入経路や劣化機構解明には、壁面で繁殖している微生物だけではなく古墳内の微生物環境全体を把握することが重要である。本研究では、高松塚古墳壁画等汚染微生物群を総合し、遺伝形質データ(特に遺伝子塩基配列)解析による種レベルの同定を行い系統分類学的位置を明らかにし、微生物劣化対策立案の基礎資料を総合的に構築することを目的とする。 高松塚古墳壁画の劣化にかかわるサンプルの提供を文化庁より受けて、カビ・酵母・バクテリアについて詳細同定を進め、埋蔵中の微生物叢の推移と古墳壁画劣化の関係について検討した。また、バイオリソースとして公開・活用可能とするための基礎研究として、劣化に係わった主要な微生物株(カビ61株、酵母19株)についてそれらの多様性についての原著論文を投稿し、広く学術研究に供することができるよう詳細同定を進め、公的機関への寄託を順次おこなった。 1)劣化要因微生物の遺伝子配列解析による種レベルでの同定 2)分離株公開化のための調査研究 3)劣化要因微生物の特性調査 4)劣化要因微生物の栄養源に関する調査
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