研究概要 |
本年度はこれまで三遠地域のみに行ってきたシミュレーション分析について,対象地域を拡大した。すなわち対象地域を愛知県全体,静岡県西部,長野県南部とし,三遠南信地域全体を考察できるようにモデルを構築した。対象地域は31ゾーンから構成されている。そのうえでゾーン間の物流,人流,時間距離のデータを整備した。本年度は三遠南信自動車道完成の経済効果計測を試みた。実際の計測に当たっては,モデルを実際に計算するのではなく,交通経済学で用いられるショートカット法を用いた。この理由としてはモデルにおける立地選択確率の計算結果が極めて不安定であったため,より信頼の置ける手法を模索した結果である。ショートカット法とは一般均衡効果による交通需要曲線のシフトを考慮した消費者余剰を求めることである。計測結果は年間便益が244億円であり,年事業費は233億円から466億円の幅であった。本年度の成果は便益をやや過小評価している可能性があり,今後より精密な計測が必要とされる。
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