研究課題
「内分泌撹乱化学物質」問題の中で、未解決のままの課題は「ビスフェノールA(BPA)の低用量効果」問題である。我々は、従来はエストロゲン受容体に結合し、作用を発現すると言われていたBPAが、エストロゲン関連受容体γ型(ERRγ)に非常に強く結合することを世界に先駆けて発見し、報告した。本研究の目的は、BPAのERRγへの結合様式はどのようか?ERRγの天然リガンドは何か?生理機能は何か?発現様式はどのようか?それらがBPAによってどのように影響を受けるのか?BPAが結合する核内受容体が他にもないか?などについて明らかにすることである。平成21年度には次のような研究成果をあげた。(1)BPA特異的な受容体として構成的アンドロスタン受容体CARを新たに発見した。(2)ERαに強く結合するビスフェノールAFは、ERβにさらに強く結合することを発見した。(3)ビスフェノールAFはERαを100%フルに活性化するものの、ERβでは不活性であることを明らかとした。(4)ERβでビスフェノールAFは17β-エストラジオールのアンタゴニスとして働くことを明らかとした。(5)マウス脳においてERRγが転写活性化する核内受容体、転写因子としてERRα、SMILE、DAX-1、RARαなどを発見した。(6)妊娠マウスにビスフェノールA(BPA)を投与し、これらへの影響を調べたところ、ERRαおよびSMILEのmRNAのみならず、TLX、NGFI-B、SIRT1のmRNAに有意な変化をもたらした。これらの結果は、BPAが脳神経系に影響する可能性を示唆した。(7)神経細胞Neuro2aにおいてall-transレチノイン酸で活性化した神経伸張をBPAは阻害することが明らかとなった。(8)ショウジョウバエへのBPA食餌により、明期静止期が活動性になる「高活動性症状」、加えて暗期静止期も活動性になり、眠る時間のほとんどない「多動性症状」の個体群が同定された。以上の結果は、ビスフェノールAが脳神経系で、特に生物時計の概日リズムの維持に悪影響を与える可能性を強く示唆した。これらが、注意欠陥多動性症状(AHDH)の導出に関連している可能性が考えられた。
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