研究課題/領域番号 |
19201018
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
細見 正明 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (90132860)
|
研究分担者 |
淵野 雄二郎 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (60015104)
豊田 綱己 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 准教授 (30262893)
本林 隆 東京農工大学, 農学部, 助手 (20262230)
西村 拓 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (40237730)
柏 雅之 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (40204383)
|
キーワード | 稲発酵粗飼料 / 耕畜連携システム / 連作障害 / TMR(完全混合飼料) / 多収性稲品種 / 直播栽培 / 産消提携 / 経営所得安定対策 |
研究概要 |
本研究では、飼料イネの生産-利用に関する、耕種農家及び畜産農家の経営調査を実施し、そこでの経済性(メリット)及び導入・定着の条件を明らかにすることにした。 埼玉県熊谷市妻沼地区を対象にして、関係農家のヒヤリング及び転作営農組合(善が島地区、古江原地区)での現地検討会を実施した。また、関連して、飼料米の生産-利用を産消連携で取り組んでいる山形県飽海郡遊佐町の事例についても調査を実施し、以下の知見を得ることができた。 第一は、耕種農家について、飼料イネの販売価格は、食用米(10a当たり1.2万円)に比較して劣位(同4000円)であるが、(1)排水不良田や未整備田でも作付け可能であり、通常の稲作体系と同じで取り組みやすい。(2)農機具について新たな投資がいらない。(3)麦や大豆などと組み合わせることで、連作障害を回避することができるという水田利用の有利性があり、地域的・組織的に取り組むことで経済的にもメリットがあることが確認できた。第二に、畜産農家の側からは、以下のメリットが確認できた。(1)輸入飼料の価格高騰や不安定要因が強まる中で、地域内で計画的に定量の粗飼料が確実に確保できること、(2)当地の酪農組合は以前から利根川河川敷を利用した牧草生産を行っており、飼料イネの収穫・調整に必要な大型機械を所有しており、技術的にも即応できる体制にあり、収穫-調整過程の低コスト化が可能であった。(3)家畜堆肥の曝気尿(善ヶ島地区は町の堆肥センターを介して、古江原地区は酪農家の処理施設)の液肥化を行い、個液分離した堆肥を耕種農家へ還元するとともに、液肥投入による窒素肥料の節減による飼料イネのコスト低減を可能にしている。第三に、遊佐町の事例も含めて評価すれば、本調査結果は、飼料イネ栽培と食用米栽培の経済性の格差を是正することは容易ではないが、米価の急激な低下と飼料価格の高騰によって、飼料米も含めたイネの飼料的利用の経営的合理性が成立する可能性を示唆している。
|