今年度はまず集光レンズ系の設計と製作を行った。レンズ系の設計においては、用いる光の波長を変化させても効率よく試料上で集光できるよう、球面収差と色収差の補正を行った。この場合、レンズの材質として、通常用いられる石英以外にフッ化カルシウムも併用した。基本的な設計方針として、光源(分光器)からの光を一旦平行ビームとし、真空用のぞき窓を通した後、試料直前にもレンズ系を設置して試料上に倍率1の像を結ぶこととした。設計終了後、レンズメーカーに作製を依頼し、組み立ておよび調整、基礎的な特性の取得を行った。現時点ではほぼ所望の特性を得ているが、フッ化カルシウム製レンズにおいてカラーセンターが発生する問題が明らかとなっており、これが特性にどのように影響を及ぼすかの検証が次年度以降の課題として残されている。 分光器についても、これまでに行ってきた設計のチェックを行い、分光器メーカーに部品の製作を依頼した。納入された光学部品を組み込んだ分光器の調整を行い、基礎的な特性の評価を行った。迷光については、実際の仕事関数顕微鏡像を取得するときに最終的な評価を行う予定にしているため、今年度は分光器から出射する光の広がりが設計通りに抑えられているかどうかの検証を行った。PEEM像を観察しながら調整を行ってきたが、現時点では低倍率の像においても視野内でほぼ均一な照明となっていることを確認しており、ほぼ設計通りの性能を有することを示すことができた。
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