これまでに「絶対仕事関数ナノスコープ」の光学系の開発を行い、それがほぼ終了したので、特性評価実験を行ってきた。W(110)上のCu薄膜の光電子顕微鏡像では、従来から知られているマクロな仕事関数だけでは説明できないコントラストが見られる。これを明らかにするためには、本研究で開発したナノスコープによる絶対仕事関数のマッピングが必要となる。今年度はマッピングに先立って、Cu薄膜の膜厚によって仕事関数がどう変化するかの測定を行った。Cuの蒸着を行いながらナノスコープのエネルギー分散測定モードで光電子スペクトルを測定し、二次電子のカットオフ位置の変化から仕事関数変化を測定した。そして、測定した仕事関数変化と光電子顕微鏡像で観察されるコントラストの変化を比較し、仕事関数に依存しないコントラストが出現する膜厚を明らかにした。さらに低エネルギー電子顕微鏡、低速電子回折による観察を併用して、Cu薄膜の表面構造の変化とも相関も観察して、光電子顕微鏡像コントラストにおいて仕事関数以外の要因が何であるかを明らかにする実験を継続した。
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