これまでに「絶対仕事関数ナノスコープ」の光学系の開発を行い、それがほぼ終了したので、特性評価実験を行ってきた。W(110)上のCu薄膜の光電子顕微鏡像では、従来から知られているマクロな仕事関数だけでは説明できないコントラストが見られる。今年度は昨年度に引き続き、Cu薄膜の膜厚によって仕事関数がどう変化するかの測定を行った。特に基板温度が変化したときのふるまいに着目をして観察を継続した。これら一連の実験により、第1層目の形成過程においては、光電子強度の変化が仕事関数の変化によって引き起こされ、基板温度には依存しないことが明らかとなった。これは第1層がpseudomorphicな構造となっていることによると考えられる。第2層目の成長では、初めに15×1構造が形成されるが、形成が終了するとCu2重層の構造変化が起こり、Cu(111)が形成される。この過程における光電子強度の変化は仕事関数の変化によるものではなく、構造変化にともなう電子状態の変化が大きな寄与をしていることが明らかとなった。 以上のように、本研究により仕事関数の測定を併用することが可能となった結果、光電子顕微鏡のコントラスト形成メカニズムをより詳細に議論することが可能となった。
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