研究課題
本研究は、ITの内包する利用過程における自己増殖機能に注目して、それを企業内に取り込み、伝統的に比較優位を誇る独自の製造技術と融合させつつ共進的に発展(共進的内生化)するメカニズムを解明し、それを誘発するインステイテューションを醸成する政策や企業戦略を体系化することをねらいとした。最終年度の平成21年度においては、共進的内生化をベースに顕著な躍進を遂げるシンガポールをも比較対象に加えて、ミクロ・深化・比較・総合の4元の分析を実行して、最終的に一連の比較分析をとりまとめて、好ましい共進的内生化を誘発するインステイテューションを醸成する政策・戦略効果を比較評価した。その結果、(1) 日本企業の競争力の源泉は、工業化社会時に形成された、危機をバネにそれを新たなイノベーションに転換するダイナミズムにあるが、情報化社会へのパラダイム変化とともに限界を露呈している、(2) その中で、先進的ITの学習・同化に邁進し、その成果と製造技術の強みとの融合を図るハイブリッド技術経営によって共進的内生化に奏功した企業は、従来の生産主導のモデルから生産・流通を一体化させたモデルに脱皮して、本来的競争力の発現に成功し、工業化社会時の成功体験に固執している企業との間に顕著な二極化を示すに至った、(3) しかし、世界同時不況を通じてITの利活用に陰りが生じ、自己増殖機能そのものが減退を余儀なくされている中で、生産・流通の一体化にも限界が生じ、さらに消費をも一体化させ、相互に啓発し合う好循環サイクルを形成するような共進モデルへの転換が不可欠となっている、ことを明らかにし、(4) この転換のトリガーは、イノベーションが発する消費誘引力と、消費者が内包するイノベーション主導意欲との共鳴による、経済的機能を超えた社会的・文化的・憧憬的機能を包摂する超機能の協創に期待される、ことを示唆した。
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Technological Forecasting and Social Change (in print)
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