研究概要 |
新規高機能性の核酸分子を創製するために、申請者らが開発した人工塩基対による遺伝情報の拡張システムを用いた新たな進化工学の基盤技術を創出する。具体的には、複製や転写で機能する人工塩基対を種々の機能性の置換基で修飾し、この修飾人工塩基を含む核酸のライブラリーを作成することにより、高機能核酸アプタマーを創出する新たなin vitroセレクション法を開発する。 昨年度は、PCRにおいて高効率・高選択的に機能する人工塩基対(Ds-Px塩基対)に成功したので、本年度はこの人工塩基対の特性を詳細に調べることと、これを用いてin vitroセレクションの検討を進めた。その結果、DNA中に組み込まれたDs-Px塩基対は、この人工塩基に隣接する天然型塩基の種類によって、PCRの効率が変わることを見つけた(Nucleic Acids Res, 37, e14, 2009)。これはin vitroセレクション用のライブラリーを設計する上で重要な知見となる。これをもとにして、人工塩基に種々の機能性置換基を結合したライブラリーを作成した。このライブラリーを用いて種々のタンパク質をターゲットにして、in vitroセレクションを現在行っている。 さらに、人工塩基対に隣接する天然型塩基の配列依存性を減らした新たな人工塩基対の設計・合成も進めている。また、この塩基配列依存性を解明するために、DNAポリメラーゼと人工塩基対を含む鋳型-基質の相互作用の研究も進めている。Ds-Px塩基対は現在、特定のDNAポリメラーゼで機能することが分かっているが、現在、ポリメラーゼの種類をさらに増やして、これらとDs-Px塩基対との相性も調べている。
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