研究概要 |
新規高機能性の核酸分子を創製するために、申請者らが開発した人工塩基対による遺伝情報の拡張システムを用いた新たな進化工学の基盤技術を創出する。具体的には、複製や転写で機能する人工塩基対を種々の機能性の置換基で修飾し、この修飾人工塩基を含む核酸のライブラリーを作成することにより、高機能核酸アプタマーなどを創出する新たな手法を開発する。 これまでに、本手法用の人工塩基対が開発できたので、本年度はこの人工塩基対に機能性置換基を結合したものを用いて、進化工学用のライブラリーの増幅の条件検討、並びに、進化工学の手法を実施した。昨年度までに種々の機能性置換基を結合した修飾塩基を合成し、アプタマーの作成を実施し、種々の修飾塩基の中から、核酸アプタマーとしての機能を著しく向上させられる置換基を決定した。そして、この修飾人工塩基を用いた進化工学の手法を確立し、標的タンパク質に対する核酸アプタマーを作成する新たな系を創出することができた。 さらに本課題の実施過程において、作成した人工塩基にチオールを結合した修飾塩基が強い蛍光性を示すことを見出し(JACS,132,4988,2010)、さらに、この塩基の相補塩基である人工塩基が消光基として機能することを発見した(JACS,132,15418,2010)。その結果、本塩基対は蛍光性の人工塩基と消光性の人工塩基から成る塩基対であり、二本鎖DNA中で本人工塩基対が形成されると蛍光を発せず、二本鎖が変性されると、本DNAの溶液の蛍光を観測することができる。このユニークな人工塩基対を用いて、モレキュラービーコンやリアルタイムPCRの新たな手法を考案し、機能性核酸を作成するための新たなビルディングブロックを得ることができた。
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