研究課題/領域番号 |
19201047
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
椿 宜高 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (30108641)
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研究分担者 |
上田 哲行 石川県立大学, 生物資源環境学部・環境科学, 教授 (30184930)
針山 孝彦 浜松医科大学, 医学部, 教授 (30165039)
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キーワード | アカトンボ / なわばり / 体温 / アキアカネ / 水田 / アオハダトンボ / 視物資 / 視覚 |
研究概要 |
椿は、カワトンボ雄が陽当たりのよい場所に好んでなわばぼりを持つことに着目し、日向と日陰にいる雄の胸部温度を測定した。その結果、約10℃の温度差が観測された。体温の差は、雄が雌に対して行う求愛ディスプレイの激しさに影響する。雌が好む雄は、求愛ディスプレイの激しい個体、つまり陽当たりのよいなわばりを所有する個体であることがわかった。雌が求愛ディスプレイによって雄を選別する理由は、雄のディスプレイを通して産卵しようとする場所の温度条件を知るためだろうと推測された。 針山は、未成熟期から成熟期にかけて体色と視覚定位が顕著に変化するアオハダトンボ複眼の内部構造を光学及び電子顕微鏡を用いて観察し、高速液体クロマトグラフィーで視物質発色団を定量した。その結果、未成熟個体に比べて成熟個体では、個眼にみられる8つの視細胞の細胞体が肥大していることを明らかにした。また、視物質発色団としてはレチナールと3-ヒドロキシレチナールが確認され、3-ヒドロキシレチナールの量のみが成熟に伴って増加していることがわかった。 上田は石川県石川郡野々市町の互いに隣接する水田29筆について、2007年秋から2008年にかけて田面水残存度(産卵場所利用可能度)、アカトンボ類の産卵(交尾)ペア数、2008年の中干し状況、アカトンボ類の羽化数を調査した。観察されたアカトンボ類はアキアカネとミヤマアカネの2種であった。アキアカネは水田を、ミヤマアカネは水路と水田を産卵場所として利用した。アキアカネのペアは産卵場所利用可能度の高い水田を集中的に利用した。しかし、産卵ペアが多く観察された水田でも、翌年のイネ苗移植時に殺虫剤プリンスが施用された水田からは羽化が全く見られなかった。また、羽化シーズン前に中干しが実施された水田からの羽化もほとんど見られなかった。この地域ではミヤマアカネが高密度で生息したが、そのほとんどは水路から羽化したものであった。
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