冷戦以後、とりわけアメリカ中枢をおそった「9.11事件」以後、比類のない軍事力を背景とする唯一の超大国アメリカ合衆国(以下、アメリカと略称)の国際的行動は、しばしば単独行動主義へと傾き、国際政治における伝統的な国家間関係のあり方を大きく揺るがす結果となった。本研究は、時として現代の「帝国」とすら目されるアメリカの国家行動が、いかなるイデオロギー・社会心理・世界観に基づくのかという問題に、アメリカ・ナショナリズムの構造と動態の両面に目配りしつつ接近を図るものとしてスタートした。そこで本研究では、アメリカ・ナショナリズムを、政治的・憲法的な統治原理、人種的・エスニック的な社会関係、宗教の政治的影響力という三つの最も主要な要因に分かち、それぞれの再検討を経たうえで、それら個別研究の成果をつきあわせ新たなデータを取り入れながら、アメリカ・ナショナリズムの全体像を再構成することを最終的な目的としている。したがって本研究の方法は自ら多領域横断的、学際的な性格をもっている。 こうした目的・方法にしたがって研究を推進しつつ、本研究は同時に、21世紀初頭の紛争と混乱に満ちた国際社会の動向を通して、アメリカ理解を深化させることによって地域研究としてのアメリカ研究の視野の拡大と方法論的革新に寄与することをも目指している。
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