本研究は、代表者(村嶋英治)および4名の連携研究者(宮田敏之・東京外国語大学外国語学部准教授、遠藤元・大東文化大学国際関係学部准教授、伊藤友美・神戸大学国際文化研究科准教授、安部(船津)鶴代・日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員)の計5名で実施した。本研究は、(1)既存研究では殆ど未利用である、タイで印刷された膨大な量の華字日刊新聞紙、(2)タイ国立公文書館等のタイ語一次資料(19世紀末から1960年代まで)、(3)タイ各地の旧華校、華人団体図書室等あるいは、華僑指導者本人もしくは子孫が、保存する、タイ刊行の中国語文献や個人文書などを、広範に収集し、(4)同時に商工業、文化、宗教、社会、教育などの華僑華人団体の関係者多数にインタビューを実施して、これらの収集資料を用いて、20世紀のタイ華僑華人社会の実像、タイ社会における役割、中国・日本との関係およびタイ社会との相互作用・関係を、多面的かつ詳細に明らかにし、既存知識に大幅な追加・修正を加えることを目的としている。本年度は、主として下記の調査を実施した。(1)タイ国立公文書館が所蔵している華僑関係タイ語文書の精査、(2)20世紀初頭にタイで発行された華字新聞は、どこにも保存されていないので、これに代わる、当時の華僑情報ソースとして、Bangkok Times(日刊英語・タイ語新聞)の閲覧・筆写、(3)タマサート大学貴重本書庫で、1910年代以降の『タイ官報』を閲覧し、中華学校の登録・廃校情報、華人系ビジネスマンのプロファイル、爵位授受、ビジネス登記などの情報の収集(4)公的図書館に保存されていない、華僑関係の出版物の収集、(5)華僑系共産党のリーダーとのインタビュー。また、連携研究者は、華僑華人系の諸登記団体、米穀産業、地方大型流通業者、華人の信仰等に関して調査を実施した。 研究代表者および連携研究者の研究業績の合計は、論文8本、学会報告6回、図書3冊である。
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