本年度は、前年度までの研究作業を引き継ぎ、「源氏物語の本文資料の再検討を通して新提言へ」というテーマのもとに、「源氏物語河内本に関する研究」「源氏物語本文の位相に関する研究」「定家本本文と註釈の生成過程に関する研究」について、年間3回の共同研究会を中心に、研究を進めた。その中の1回は、「源氏物語本文研究の新たな流れ」のテーマのもと、国文学研究資料館の「基盤研究(A)」との共催で、共同研究会をおこなった。 なお、4年間にわたる基盤研究(A)の最終年度の研究成果として、研究書『源氏物語本文の研究』(豊島秀範編、282頁)と研究報告書『源氏物語本文の再検討と新提言』(第4号、325頁)を発行した。『源氏物語本文の研究』には研究篇に伊藤鉄也「在英源氏物語画帖の絵と詞」、渋谷栄一「藤原定家筆『源氏物語』(四半本系原本4帖)の本文資料の再検討」、田坂憲二「京都大学本系統『紫明抄』と内閣文庫本系統『紫明抄』」、上野英子「山岸文庫蔵伝明融等筆源氏物語に関する書誌報告書」、豊島秀範「『源氏物語』本文の実態一吉川史料館蔵(毛利家伝来・大内家伝来)『源氏物語』を中心に一」など8本の論文と、資料編として中村一夫「源氏物語諸本対照語彙表早蕨巻」を掲載した。 研究報告書『源氏物語本文の再検討と新提言』第4号には、研究論文として遠藤和夫「『首書源氏物語』所引『細流抄』の室町語彙」、田坂憲二「内閣文庫本系統『紫明抄』の再検討」、渋谷栄一「岩国・吉川家本『源氏物語』(毛利家伝来)と『七毫源氏』の巻頭目録と事書標題について」、豊島秀範「『源氏物語』本文の実態一吉川史料館蔵『源氏物語』を中心に一」と、資料翻刻として「花散里」「野分」巻の主要本文13本による対校一覧を掲載した。 4年間に積み重ねた本文資料をもとに、次年度以降も、さらに本文研究を継続する予定で進めている。
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