天理図書館・成簣堂文庫等において、五山版ほか中世刊本の調査を行った。特に成簣堂文庫においては、『禅門宝訓集』『虎丘隆和尚語録』『破庵和尚語録』の各初版本等、他に伝本のない希少な五山版を中心に調査を行い、貴重な書誌データを採取することができた。 研究成果としては、別記のような論文・発表等があるが、中でも『江戸時代初期出版年表』(2011年2月刊)が特記される。江戸初期には五山版を初め中世の刊本を覆刻・翻刻した出版物が多く、本科研でもそれらの調査を研究目的の一部に掲げており、交付期間内に可能な限り原本の調査・収集を行い、五山版等の影響下にある版本を年表に多数収録することができた。将来における「中世出版年表」の公刊に向けた階梯としても、この年表を刊行した意義は大きい。 また五山版序跋・刊記集成の作業を引き続き行い、基本データの入力をほぼ終了した。これについては、インターネット上に公開されている画像を利用することにより、作業の効率を高めることができた。「五山版所在目録」「中世出版年表」についても作成作業を継続し、特に古書肆の目録や入札目録、また近時刊行された各寺院の聖教目録等からのデータの追補を重点的に行った。
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