研究課題/領域番号 |
19202023
|
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
永原 陽子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (90172551)
|
研究分担者 |
粟屋 利江 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 教授 (00201905)
鈴木 茂 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 教授 (10162950)
今泉 裕美子 法政大学, 国際文化学部, 教授 (30266275)
前川 一郎 創価大学, 文学部, 准教授 (10401431)
清水 正義 白鴎大学, 法学部, 教授 (20216104)
|
キーワード | 植民地責任 / 脱植民地化 / 戦争責任 / 人道に対する罪 / 奴隷貿易 |
研究概要 |
最終年度にあたる2010年度には、(1)植民地体制下の大規模暴力の実態とそれをめぐる歴史認識の分析、(2)20世紀史の中での脱植民地化の諸局面についての構造的理解、を進めることを目標とし、7月、10月、12月に研究会をもち、また分担者がエチオピア、オランダ、ナミビア、南アフリカ等で調査を行った。これらを通じて、20世紀の初頭以降、植民地体制が国際化するとともに、それが萌芽的に現われた「植民地責任」論を封じ込める役割をもち、20世紀全体の脱植民地化過程を規定したことが明らかになった。これにより、第二次世界大戦後の狭義の「脱植民地化」期に限定することなく、20世紀の世界史的な過程として植民地主義と脱植民地化を捉える上での「植民地責任」概念の有効性が確認された。 本研究の成果を一般に公開するために、12月にはシンポジウム「文化財・身体の返還と略奪-植民地責任論の視点から」を開催した。現在の世界で最もわかりやすい形で「植民地責任」論の論点となっているのが植民地征服過程や植民地支配下で略奪された文化財や身体標本等の返還をめぐる問題であり、具体的な事例に基づいて「植民地責任」論の現在の位相を、一般市民を含む参加者に対して知らせることができた。 また、2010年が日本による「韓国併合」から100年に当たったことから、日本=韓国関係を、世界史的な広がりの中において再考する機運が歴史学の内外で高まったが、その中で、本研究の提唱する「植民地責任」概念が広く関心を呼び、研究代表者は「歴史学研究会」大会、「『韓国併合』100年を問う-2010年国際シンポジウム」、「日韓・韓日歴史家会議」において招待講演を行った。本研究の前身となる科研研究で提唱し、本研究が実証的・理論面で発展させてきた「植民地責任」論は、世界史理解に不可欠な視点として定着してきたと言える。
|