本研究は、日本列島に分布する装飾古墳を対象とし、現状記録写真の撮影とVR画像を作成することで、装飾古墳の記録・保存・管理のモデル事業を展開するためのデジタルアーカイブを構築するものである。従来、装飾古墳は所轄の教育委員会等の管理団体が、目視と異常部位の写真によって記録されてきた。しかし、VR技術によって作成される位置情報をもった画像は、石室のような立体構造物の記録保存に最適であり、今まで監視システムが確立していない装飾古墳の経年変化を記録するための有効な手段となり得る。この研究の意義は、現時点での装飾古墳の記録として重要であると同時に、現地では春秋に公開が制限されていた装飾古墳をweb上で展示および公開することで、装飾古墳に対する意識を高め、広く社会に成果を還元することができる。この目的に沿って、大型の文化財保存のためのデジタルアーカイブの実証実験を行う。 装飾古墳のような立体構造物でかつ計測対象に非接触で正確なVR画像を取得するために、写真測量の方法を応用する。これは、石室内に方格座標を設定し、その基準線に沿って60%の重複で撮影する。対象物には事前に着脱可能な対標(待針など)を打ち、それを写し込んだ画像をコンピュータ上で立体画像(VRモデル)へと合成する。VRモデルはVRMLやFlashなどの動画コンテンツへと加工する。また、記録保存に適した型式として正斜投影画像へ加工し、定点観測の基礎資料として用いる。 なお、高精細(4×5フィルム)での装飾古墳撮影を継続的に行い、VR画像では表現しきれない画像記録も蓄積する。
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