研究概要 |
本研究組織(「東京経済法研究会」)による本研究は,高度寡占産業における市場支配力が不当に濫用され,競争を制限または阻害し,又は消費者の利益を不当に侵害することを防止できるような規制システムのあり方を検討するものである。研究の具体的な素材としては,情報通信産業を中心にし,本年度では,NTT各社,携帯電話会社,及び規制行政庁・有識者などからヒアリングを行った。これらの市場では,国際的な関係も組み込まれているということから,欧米における電気通信事業産業における本問題への取り組みを現地調査を含め実施し,また,広義の情報産業に属するマイクロソフト社のOSに関する市場支配力の濫用の問題につき,今回は特にEUにおける同社のEC条約違反問題を研究対象とした。さらに,上記の情報通信産業以外に,前年度までの研究対象であった電気産業についての市場支配力規制問題について,本共同研究の成果を雑誌に連載の形で公表した。 これらの高度寡占産業においては,従来公益事業規制を受けていた既存事業者や,当該市場において布場支配力を長く保持してきたマイクロソフト社などが,その市場力を背景に新規参入者を排除し,又は取引の相手方に対し不当に不利益な取引条件を押しっけようとする事例が見られ,それへの規制が独占禁止法及び各事業法などによって行われ,又は試みるべきであるとの主張がなされている。法制度・政策としては,従来から独禁法理論において用いられている,構造規制・行為規制・成果規制の区別が有益であり,電気通信事業に対する接続規制は,構造規制を基礎とし,これに若干の行為規制で補足するものであり,これに対し,電気事業規制については,欧米と異なって日本では逆に,行為規制を主として組み立てられている。その他,競争の促進と効率性・セキュリティの関係,濫用規制の有効性・妥当性なども,国際比較の中で今後検討すべき論点である
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