研究課題/領域番号 |
19203011
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 秀夫 京都大学, 経済学研究科, 教授 (40148599)
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研究分担者 |
生越 和昭 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (30094527)
原田 哲史 四日市大学, 経済学部, 教授 (70208677)
渡辺 恵一 京都学園大学, 経済学部, 教授 (20148365)
伊藤 誠一郎 大月短期大学, 経済部, 教授 (20255582)
中澤 信彦 関西大学, 経済学部, 教授 (40309208)
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キーワード | 啓蒙思想 / 経済学の形成 / ヨーロッパ / 公共的な徳 / スコットランド啓蒙 / アメリカ啓蒙 / グローバル / 知性主義 |
研究概要 |
この共同研究は、啓蒙思想と経済学という学問の形成の密接な関係を、イギリスと英語圏だけではなく、ヨーロッパおよび日本にまで視野を広げ、先駆的な経済と思想のグローバル化を意識しつつ解明しようと考えて始めた研究の最終年である。研究代表者は、スコットランド啓蒙とアメリカ啓蒙、そのなかでの経済学の展開を究明したし、また全体の総括の役割を行なった。アウグスチヌス主義とジャンセニズム、ボワギルベール、スコットランド啓蒙やイングランドの経済思想とジュネーヴにおける啓蒙の関係、ジェノヴェージ、ロッホ、ペティ、スミス、バーク、ペイン、メーザー、そして福沢諭吉などが取りあげられたが、ナショナリズム、愛国主義などの、一見すると保守的な思想も、決して知性による社会の改革に全面的に反対したわけではなく、単純な合理主義によっては必ずしも複雑な社会や人間存在は十分に把握できず、もっと根源的な人間と社会、文化の理解が必要であるという主張であって、啓蒙の批判的継承という意味合いが案外大きいのではないかという結論が展望として開かれた。今回の共同研究は、ヨーロッパや日本にまで視野を広げたが、啓蒙思想の多様性と経済学の形成の、これまた多様性、多元性に、迫ることができたように思う。しかし、それは学問共同体の遺産の継承として、交流をもちながら展開されたし、啓蒙の知性主義の精神自体は、様々な変容を余儀なくされつつも、普遍的な潮流として存在した。啓蒙の戦略的学問としての経済学は守旧的な階層的社会の改革の武器として導入され、自由主義社会のなかで諸個人の生活の安定を保証することによって、公共的な徳を実現する基盤の形成に貢献するものとして理解されていた。
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