本年度は最終年度であるため、この間実施してきた理論的及び実証的分析の結果をとりまとめるとともに、今後の課題についても整理することにした。具体的には、政権交代後の分権政策の影響も視野に入れて、少子高齢化社会における地方財政の持続可能性をいかに確保していくか、同時に国と地方の財政は相互に影響しているため全体として我が国の財政再建を実現していくための受益と負担の関係及び行財政システムの在り方について検討を実施した。 その結果、明らかになったことは以下の点である。 (1)地方財政の健全性を規定しているもので自治体の裁量によらない制度に地方交付税や補助金があるが、現状ではソフトな予算制約から自治体の健全化努力が反映しづらい傾向にある。 (2)もっとも、自己改善努力に限界がある地域に所在する自治体もあり、一定の財源保障制度は継続する必要がある。 (3)行財政システム改革として市場原理や民間経営手法の活用は、全ての自治体に有効とはいえず、一定規模以上の人口や財政力が合わせ備わっていることが必要である。 (4)「新しい公共」による協働型社会や地域主権の考え方も、人口が減少している過疎地などではNPO活動等が低下しており実際の適用は困難である。 (5)合併効果も一定規模に達しないと経費節減や政策形成能力の向上は見込まれないため、今後見直しが必要である。 今後、自治体別の政策メニューの違いを踏まえた財政執行が可能か検討することにする。
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