研究分担者 |
高谷 紀夫 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (70154789)
市橋 勝 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 准教授 (10223108)
坂田 桐子 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (00235152)
人戸野 宏 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (20304371)
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研究概要 |
まず,社会的痛みについての理論的・概念的枠組みをより精錬するために行ったレビューをまとめ,22年10月に刊行された書物に収録した。次いで,これまでの研究から継続する形でマクロ,メゾ,マイクロそれぞれの観点から実証的な検討を行った。 マクロレベルからのアプローチとしては,排斥を検知するメカニズムに関してERPならびに皺眉筋の反応を指標として詳細な検討を行った。実験の結果,人が他者から相互作用相手として選択されたりされなかったりする相対的な頻度が他者と同程度の場合であっても,単に他者から選択されないことそのものがネガティブに知覚されることが示された。また,排斥される経験が直ちにネガティブな情緒を引き起こすのではなく,排斥直後にはまずその事象に対して注意資源が向けられ,その後ネガティブな情緒が生じるという時系列変化が認められることが示された。さらにNIRSを用いた実験によって,遠い将来のことを想定した場合に,近い将来のことを想定した場合よりも排斥後の右腹外側前頭前野(rVLPFC)の活性が高まることが明らかとなった。このことは,時間的な距離の取り方が被排斥経験後のネガティブな情動の制御と関連することを示すものである。 メゾ・マクロレベルからのアプローチとしては,社会心理学的な実験によって時間的展望の社会的痛み制御機能を検討した。オンラインコミュニケーションを用いて相互作用を行わせる実験において他者から排斥された際のネガティブな反応が遠い将来を想定することで抑制されることが示された。
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