研究課題/領域番号 |
19203032
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
苧阪 直行 京都大学, 文学研究科, 教授 (20113136)
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研究分担者 |
福山 秀直 京都大学, 医学研究科, 教授 (90181297)
美馬 達哉 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20324618)
蘆田 宏 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20293847)
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キーワード | ワーキングメモリ / 実行系 / 情動脳 / 社会脳 / fMRI |
研究概要 |
ワーキングメモリのはたらきを担う「知性脳」と、報酬や痛みの処理にかかわる「情動脳」、そして自己・他者認識にかかわる「社会脳」の関係性を探るために、機能的磁気共鳴画像法を用いた実験を実施した。事前調査により面白いと判断された4コマ漫画とそうでない4コマ漫画を、fMRI装置内で呈示し、そのときの脳活動を測定した。そして、4コマ目が呈示されたときの脳活動を、「面白い条件」と「面白くない条件」で比較したところ、「面白い条件」において、前頭前野背外側部や上頭頂皮質といったワーキングメモリのネットワークを構成する脳領域の賦活が認められた。物語や文章の理解には、ワーキングメモリのはたらきが必須であるが、「面白い」といった内的報酬が、ワーキングメモリの脳内ネットワークの活性化を促したという実験結果は、情動脳が知性脳の働きを促進していると言えよう。一方、社会脳が、ワーキングメモリに及ぼす影響を検討するために、2つの文章間で主人公の心の状態が、一致するか否かを判断させる心の理論の開発をおこなった。この課題遂行中の脳活動を測定し、文章の時制判断を要求する統制条件との比較をおこなったところ、両側の上側頭溝や側頭頭頂接合部、そして、言語性ワーキングメモリの一部を構成する左側下前頭回の活動の増加が認められた。また、興味深いことに、心の理論課題成績には、個人差があり、左側の上側頭溝の活動が、他者の心の状態を推定する能力を予測することがわかった。ワーキングメモリ研究においても、個人差が重視されていることから、今後、この課題は、ワーキングメモリと社会脳の関係性を理解していく上で、重要な役割を担うことが期待される。
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