研究課題/領域番号 |
19203038
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
室橋 春光 北海道大学, 大学院・教育研究院, 教授 (00182147)
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研究分担者 |
田中 康雄 北海道大学, 大学院・教育学研究院, 教授 (20171803)
安達 潤 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70344538)
斎藤 真善 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50344544)
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キーワード | 発達障害 / 学習障害 / ADHD / アスペルガー障害 / QOL / 青年期 / 障害特性 / 脆弱性 |
研究概要 |
QOLアンケートと心理的脆弱性評価との関連性を検討するため、大学生20名を対象としてワーキングメモリ(WM)測定を実施するとともに、QOLアンケートを依頼した。自己評価関連因子とWM機能との間には明確な関係はないが、対人関係因子とWM機能の間にはある程度の関連性が認められた。対人関係におけるWM機能は重要な役割を果たしているものと想定される。他方、ディスレキシア特性とWM機能の間には明確な関係が存在した。これはより直接的な関係であり、ディスレキシア特性の改善のためには、WM機能の改善が課題となると考えられる。 ディスレキシアを中心とする障害特性について、音韻処理、眼球運動、協調運動、ERP測定などを実施して臨床的症状との関連性を分析し、脆弱性評価について検討した。読み速度検査と様相間文字プライミング効果との間に一定の関係が示され、ディスレキシアにおける流ちょうさの究明に関連する糸口が見いだされた。また眼球運動測定では、一定の速度以上の運動物体に対する追視困難な事例の存在が見いだされた。読みに対しては間接的影響にとどまるが、生物学的脆弱性に関連する特性であることが示唆される。さらに、協調運動測定では、バランスを持続的に保持することの困難さが見いだされ、ディスレキシア特性が小脳を中心とする脳内ネットワーク機能の不全さを反映したものでありうると想定された。ERP測定では、音韻刺激に対するMMNが計測された。純音刺激と比べて音韻情報の処理には不安定さが存在し、複雑な刺激に対する急速な対応の困難さが伺われた。これらは少数の事例による分析でありさらに今後の検討を必要とするが、発達障害特性を有する子どもたちにおいては、多種の測度で平均外値をとることが多く、共通基盤としての生物学的脆弱性とそれに応ずる社会的環境の分析が必要となると想定される。
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