研究課題/領域番号 |
19204004
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
加須栄 篤 金沢大学, 数物科学系, 教授 (40152657)
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研究分担者 |
浦川 肇 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (50022679)
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キーワード | 測度距離空間 / エネルギー形式 / 変分収束 / Gromov-Hausdorff収束 / ネットワーク / 有効抵抗 / 2―調和写像 |
研究概要 |
距離グラフの変分収束に関する課題について昨年度に続き研究を行い、有限ネットワークの新たな収束理論の構築とその展開として、有効抵抗を用いたグロモフの意味での有限ネットワーク列の収束の基本的性質および極限空間の解析を行った。極限空間として現れる無限ネットワーク(可逆マルコフ連鎖)は重要な研究対象であり、この研究において、有限ネットワーク列のマルコフ形式の極限として現れる無限ネットワーク上のマルコフ形式の族について、それぞれに付随する倉持コンパクト化のポテンシャル論的性質をスペクトル埋め込みという新しい方法で解明し、そのコンパクト化の意味を新しく付け加えた。具体的には、倉持境界とディリクレ有限関数およびランダムウォークとの関係を明確にした。これは、マルチン境界と正値調和関数およびランダムウォークに関するドゥーブによる古典的結果に対応するもので、今後の研究に基本的な役割を果たすと考えられる。また、ディリクレ有限関数だけではなく、ディリクレ有限写像にも適応でき、これによって距離空間、とくにアレキサンドロフの意味での非正曲率空間をターゲットとしたエネルギー有限な写像の無限遠点での挙動に関する、従来の方法では得られない新しい知見を与えた。さらに非コンパクトリーマン面の三角形分割に現れる無限グラフを考えるとき、三角形分割によるグラフの実現をグラフからリーマン面へのディリクレ有限写像と考えることができ、リーマン面のディリクレ有限な等角写像の理論の離散版構築へのひとつの道筋を与えたことになる。 研究課題の一つである非線形作用素の変分収束に関して、調和写像の拡張である2―調和写像を考察し、これに関する変分収束理論の展開のための基礎的研究を行った。
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