研究分担者 |
重川 一郎 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00127234)
國府 寛司 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50202057)
西和田 公正 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60093291)
中西 賢次 京都大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (40322200)
大鍛治 隆司 京都大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (20160426)
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研究概要 |
今年度はまず,修正KdV方程式の初期値問題を周期境界条件のもとで考え,その適切性を研究した.非線形発展方程式の初期値問題に対する適切性の研究は,非線形偏微分方程式論におけるもつとも基本的な問題の一つである.今年度は,修正KdV方程式(modified KdV equation)に対し,非線形相互作用の構造が初期値問題の可解性にどのような影響を与えのかを調べるとともに,それを用いて解がどの程度弱い空間はなわち,広い空間)まで存在するのかを調べた.2乗可積分関数のソボレフ空間に基づいた研究は,1993年にBourgainがソボレフ空間の滑らかさを示す指数sに対し,s>1/2なら初期値問題は適切となることを示した.このときの彼の証明方法はフーリエ制限法とよばれ,線形解からのずれを精密に測る関数空間を設定したのが要点であった.2004年に高岡-堤は,このフーリエ制限ノルムに非線形項の相互作用を考慮した項を加えることにより,s>3/8までソボレフ空間の指数(すなわち,関数の滑らかさ)を下げることができることを示した.今回は,適切性を示すことはできなかったが,解の存在はs>1/4で証明することに成功した.この証明では,mKdVの完全可積分性は使っておらず,他の非線形分散型方程式への応用も期待される.次に,減衰項と定数外力場が付いた非線形ジュレディンガー方程式である,Lugiato-Lefever方程式の定常解の存在について,周期境界条件のもとで研究した.この方程式は,減数項が付いているため変分構造を持たない.そのため,Lyapunov-Schmidtの方法により,定数定常解からの分岐は証明されていたが,安定性・不安定性や,分岐曲線が折れることがあるかなどの定性的な性質はあまり分かっていなかった.今回,中心多様体縮約の方法を用い,ある程度これらの問題を解決することに成功した.
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